仔犬のパレード
第2章 小屋
「勝手に開けんじゃねーよ!!」
また聞こえた怒りの声
えーー
こわーい
行きたくなーい
翔「はぁ…」
なんだか面倒臭そうな臭いがする展開に
あからさまに大きな溜め息が出る
…
……
あのガラスが割れた様な音
二人とも、怪我してなきゃいいけど…
と、気持ちを切り替えた俺は
冷凍庫で作っておいた氷をポリ袋に入れ、雅紀へとそれを渡す
翔「あと5分くらい水で冷やしたら、氷当てとけ。直接じゃなくてタオルに包めよ。」
雅紀「はーい。潤どうしたのかな?」
翔「今見てくるよ。」
キッチンから出るとすぐに見渡せる広間
そこの1番奥にある部屋の扉が開いている
そして、その前には智
ぼけっ。と突っ立ってる智
向かう途中
広間の真ん中に鎮座するソファーへ目を向ければ
ソファーの上で毛布をかけられて眠る あの子が視界に入った
智「翔…」
近づく俺に気がついて、哀しそうに更に眉毛を下げる
…
智は、潤や雅紀にはすこぶる甘い
きっとあの子にも
智の足元に散らばる残骸
俺がこんなことしたら、舌打ちじゃすまない
翔「怪我は?」
キラキラと光るその欠片は
グラスか
ううん。と首を振る智
翔「何があった?」
智「潤に、ただいまって。
ノックしても返事がないからドア開けて、もう1度言ったら怒られた」
怒られた。って…
こんな時の智は、やけに幼稚になる
俺より歳上のクセに
いや、正確な年齢は知んねーけど
開いたドアから中を覗けば
ベッドへ寄りかかり カチャカチャとゲーム機のコントローラーを操る潤が見えた
翔「潤ー、ただいま」
潤「…………ぉかえり…」
ちらっ。とだけ視線を俺に向けた潤
智「ガーーーン!」
↑とは言ってないけど、明らかに落ち込んだ智
…はぁ…
テレビがないこの部屋
カチャカチャ
カチャカチャと
コントローラーを操るの音だけが
微かに響いていた