仔犬のパレード
第2章 小屋
ー*ー
智「俺、嫌われてんのか?」
さっきの出来事をまだ引きずっている智
つか今更感半端なーい
潤の部屋の扉は静かに閉じ
グラスの破片は片付けた。俺が
キッチンの床も片付けた。俺が
翔「だろうね。」
智「何でだと思う?」
翔「知るかよ。
んなの自分で考えろよ。」
ま、大体わかっけど
智「あぁ?おい翔」
あからさまにトーンの下がる声
翔「智、邪魔。この子に点滴すんだから退いて」
智「…………チッ」
超不満で不服で不愉快そうな顔をした智
だけど事が事なだけに、あっさりと退ける
…
……
あぁ…やっぱりなぁ
血管なんて見えやしない
あったとしても、毛細血管かっつー細さ
窪んだ目元、そげ落ちた肉、所々抜け落ちた髪、真っ白を通り越して青く ボロボロの肌
脱水に栄養不足に不衛生
でも
すーすー。と深い呼吸に乱れはなく、呼吸の音も綺麗
たまたまか…
何か病気にかかっている気配はない
ま、知識のない俺の見立てでなんだけど
しっかりと閉じた瞼
『ここから出して』
智が言ってた言葉
何か強い意志があってのことなのか…
けれど、その閉じた瞼は現実を見ない様に拒絶するかの様に、うんともすんとも動かない
翔「……」
もう
この子には、極力痛みを与えたくない
でも、出来れば太い針にしてぇなぁ
俺は、全身くまなく血管を探し、悩んだ挙げ句
右足の甲に針を刺した