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仔犬のパレード

第2章 小屋






翔「ふぅ……いつつ…」


すげぇ肩凝った


とりあえず…今の俺にできることはやった



滴下速度は適当
でもこの身体に急激に水分を入れるのは、なんとなく良くない気がしてゆっくりと点滴を落とす


智「ハチ。元気になるかな」


頃合いを見計らったのか、俺が一息つくと声を掛けてきた


声に振り向けば
その顔に、さっきの不満そうな表情はもうない


翔「さぁな。俺ができるのはこれだけ。
栄養価が高い薬は、この血管からは入れられないから、あとはこの子が目覚めるのを待つしかないな」


まぁそもそも、それをするための機材も薬も此処にはないし
何より、俺にそんな技量はない


智「……」


翔「…?」


智「………」


翔「? なんだよ?」



点滴を刺す前にと
雅紀がヤカンで沸かし直してくれたお湯で
垢だらけで汚れだらけの その子の身体をざっとだが拭き

新しいシャツやズボンを履かせ
空いている潤の部屋の隣部屋のベッドへ寝かせた


それだけでも見違えるほどに、が(ピーー)から、人間味を感じるようには様変わりした

そんなその子を 智はじっ。と見詰めたまま

だんまり


智「…………」


こーいう時は
話すまで待って欲しい時だ


と思ってる



智「……………」


翔「……」


智「……潤」


翔「ん?潤?」


智「うん。ハチを看させたらどうかなって」


そう言って智は俺を見た


その瞳は、真剣そのものだったけれど
なんとも自信無さ気だった






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