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仔犬のパレード

第3章 首輪






智「翔。おはよう」


翔「あ、おはよ」


ちょうど昼飯を作り終わるほぼ12時に起きてきた智
本日2度目の智からの おはよう
とっくに、おはよう。の時間ではないけれど、智は必ずそう言う




智「雅紀ー。おはよう」


寝起きの少し掠れた声を張って、広間にいる雅紀に声をかける


雅紀「おはよー」


智「潤は?」


翔「か…ハチの部屋」


智「そ」


智は、ふぁぁぁと大きな欠伸をして
その寝癖だらけの髪の毛をふわふわと揺すり
スウェットの裾から腕を入れボリボリと腹を掻きながら「勉強かぁ」と雅紀の元へ向かう


その隙間から見えた白い肌


そこにアンバランスに咲く赤黒い痕


翔「、………」


俺は目を逸らす


それは…見たくないから





……


俺達は智の稼ぎで生きている


その"稼ぎ"がなんなのか
そんなのずっと前からわかっている


のに

見る度
見てしまう度に

黒の絵具を垂らされたみたいに
俺の感情はゆらゆらと揺れる


だから
そんなの心底見たくないんだよ




ヒタ…


翔「っ!」


俺の頬に触れた冷たいモノ
驚いて意識を戻せば、それは智の手


智「翔。どうした?」


翔「……」


いつの間に…だって雅紀のとこに…


智「翔」


翔「……ぁ…」


智「翔。疲れたか?」


真っ直ぐ真っ直ぐ俺の名前を呼び


真っ直ぐ真っ直ぐ、その瞳で俺を見る


翔「……………………す、こし……」


そんな目で見んな

嘘が吐けない



翔「…………疲れた……」


智「そか。じゃ 休め」


頬に触れた冷たい親指がゆるゆると優しく動く


翔「でもっ……」


智「俺が出るまでになっちまうけどな」


そう言って、智は眉を下げ儚く笑う







あぁ…


また、あの日の始まりが近いんだ








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