仔犬のパレード
第3章 首輪
ー*ー
智「頂きます」
丁寧に手を合わせる
翔「いただきます」
雅紀「いただきまーす」
潤「………ます」
智の「頂きます」を待って俺達は飯を食べ始める
此処では、いくつかの決め事があって
例えば、飯は必ず一緒に。とか
例えば、好き嫌いしない。とか
その殆どが言っちゃえば、世間一般的には当たり前な事。なのかもしれない
でもそんな事が、此処で生きる俺達…には必要なんだ
と思う
智「お、うまっ。な?」
雅紀「うん。うまぁい」
散々だった料理は
見よう見まねで作って覚えてきた
翔「それはどぉも」
こうして好みの味をインプットしていく
智は…
"稼ぎ"からは朝方に帰って来て
必ず朝飯を俺達と食ってから休む
そして、こうやって昼飯も一緒に食う
で、夕飯までの時間
雅紀と潤(潤はほぼ居ないけど)と、この広間で過ごし
夕飯を食べた後、また稼ぎへ行く
そんな毎日
そんな毎日が
きっと智には大切で、大切過ぎて…
智「あ、そだ俺。明後日から暫く帰らないから」
翔「…」
昼飯の途中で、さも朗らかな団欒風に会話を持ち込んできた智
雅紀「いつもの出張?」
智「うん。そう出張」
潤「……」
雅紀「どれくらい?」
智「前と同じくらいかなー」
雅紀「…そっかぁ。頑張ってね」
智「雅紀。ありがとう。お土産買ってくるな。
潤。ハチのことよろしく頼んだよ」
潤「……」
翔「…潤はしっかりしてるし、覚えも早いから心配ない」
智「そっか。
翔、疲れてんだから
午後は部屋で休めよ。
飯美味しかった。ご馳走さま」
そうしてまた丁寧に手を合わす
…おい
智「翔」
翔「……わかってるよ」
雅紀・潤「……」
雅紀と潤が俺を見る
智は馬鹿だ
そんなこと雅紀と潤の前で言わなくてもいいだろが
なんとも微妙な会話をして、なんとも微妙な空気を作った本人は
何事も無かったように
いや、寧ろなんだか満足そうに笑って
自分の食器を重ねてキッチンへと歩いてく
残された俺は
雅紀と潤の視線を無視して
ただ無言で飯を食うしかなかった