
仔犬のパレード
第4章 歯
食い終わった食器を洗い
最後の食器の泡を流して、手を拭いた
翔「……」
潤が、行かないことは予想はしていた
だから行かないことに驚きはしないが
潤『行けない』
どういう意味だ?
ただの言い間違い?
だったのか。それかただの俺の聞き間違いで
「行かない」って言ったのかもしれない
…
でも……
なんでだろう、やたらと何かが引っ掛かって
…
いやいや、考え過ぎか
そうだ。きっと俺の考え過ぎ
深い意味はない
翔「入るぞ」
カチャ。と開けたドアの先
翔「……」
そこには最早見慣れた光景
潤が和也の顔を覗き込むようにベッドに頬を付け
そして目を瞑り
……ん?目を瞑り?
え?寝てる?
翔「…おい、潤?」
潤「すぅ…すぅ…」
翔「……」
テーブルの上には
ゼリーが入っていたコップ
その中は既に空っぽ
翔「……」
すぅすぅと気持ち良さそうに寝息を立てる潤
俺はベッドへ近づきその顔を覗き混む
翔「……ふ」
なんだ。眠かったのか
あどけない、寝ている潤の顔は普段の仏頂面の面影はなく
頬が緩んでいて、更に幼さが増している
智とは違う、少し固めの髪
俺は、それに手を伸ばし
起こさないようにだけ気を付けて
ゆっくりとその髪をすく
そして
次に和也の左腕に手を伸ばす
ポタ…ポタ…
と落ちていく水滴が吸い込まれていくそこ
つい先日、針を刺し変えた場所だ
うん。和也も変わり無さそうだし
このまま置いて行っても大丈夫か
俺は、余っていたタオルケットを潤に掛け
そっ。と静かに部屋を出て
2人を置いて此処を出てしまったんだ
