テキストサイズ

仔犬のパレード

第4章 歯






雅紀「翔。これは?」


翔「いらないよな」


雅紀「じゃぁこれは?」


翔「いらない」


雅紀「えー…あ!じゃぁこれは?」


翔「いらん」


雅紀「……ちぇぇ…あー!あれは!?」


翔「あ!おい!中は走んな!」


雅紀「べぇー♪♪」


翔「なっ?!あ!雅紀!」


雅紀「あひゃひゃ♪」


バタバタ


バタバタと、腕を掴もうとした俺の手をするりと避けて
べーと舌を出し走り出す


そして、あっという間に手の届かない所へ行ってしまった雅紀


翔「……」


さっきっから雅紀が持ってくんのは
俺には到底扱えそうにない謎の食材に調味料


んで、雅紀が駆けて行った先には
品数の僅かな菓子が並ぶ棚だ


色褪せたパッケージを手に取っては眺め
置いては違う物を取って そして眺める


その顔は


翔「…まぁいっか…」


ニコニコとした表情は変わらずだが
なんだか本当に楽しそうで


つい。許してしまう


…あれか、なんか俺、智が潤にも雅紀にもデレデレな気持ちがわかっかも


これを…なんて呼べば良いのか




いつか


そう。いつかさ


貴方が望むなら


もう、傷付く必要も、痛みに耐える必要も無いように


そんな日々が送れますように



そう。願う




雅紀「しょぉー!」


ん?と、呼ばれた方向へ視線を向ければ
さっきとは違う所にいた雅紀


雅紀「潤、喜ぶかなー?」


その手に持っていたモノ





翔「あぁ。買って帰ろうか」


そして


雅紀の本当の顔が


戻ってきますように…









ストーリーメニュー

TOPTOPへ