
仔犬のパレード
第4章 歯
いつつ…腕限界
翔「雅紀。カギ頼む」
雅紀「……はぁい…」
雅紀は…雅紀が一度あの状態になると
普段の雅紀に戻るのに多少時間がかかる
俺の勝手なイメージだけど
ゆるゆると夢から覚めるような
徐々に覚醒していくようなそんな感じで
今は、ぼー。としている状態だ
まぁ前に比べたら、だいぶ早くなったけど
翔「ポケットに入ってる」
俺は荷物を抱えたまま、ん。とカギが入っている方の腰を雅紀に向ける
雅紀「…ぽけっと…?…あーぽけっと…」
ごそごそと俺の尻に付いた穴に、雅紀が手を突っ込み鍵を取り出した
翔「その、銀のやつ」
雅紀「うん…」
雅紀は、鍵穴に鍵を差し込みガチャンと鍵穴を回した
雅紀「…あれぇ?」
翔「ん?どした?」
雅紀「しょぉ?…扉、開かないよ?」
翔「…え?」
……つーとこは…俺…
翔「閉め忘れた…?」
雅紀がもう一度鍵穴に鍵を差し込み
今度は反対にまわせば、ガチャンと鳴る
そして扉を押せば…
雅紀「あ、開いた」
マジか……
え…でも、俺閉めたよな?
いや…記憶はない
でもいつも当たり前の様にやってるし…
えーうそ、何やってんだ俺…
……入られた所で、盗むもんも別に此処には無いけどさ
智が居たら超大目玉だ…
雅紀「ただいまー」
俺のテンションが下がっていくのに反比例して
雅紀は、段々といつもの雅紀を取り戻していく
雅紀「あれー?」
翔「…今度はどうした?」
雅紀「翔。開かないよ?」
翔「は?何言って…」
雅紀が押した扉
しかしそれは中途半端な所で止まっている
翔「押せば開くだ…ろ?」
俺は背中を使って、扉を押す
ぎっ。と少しだけ動いた扉
けど…
翔「ホントだ。何かがつっかえてるみたいだな」
俺は、その何かを確認するために
仕方なく抱えていた荷物を廊下へと置いた
もう、既に中が覗ける程には開いてはいる扉
俺はそこから頭を入れ扉の内側を覗きこんだ
翔「?」
そこにあったのは、床に広がる白い布…の塊
翔「…ぇ…」
それには、見覚えがあった
雅紀「翔?」
いや、忘れるわけない
だって…それは毎日見てるから
翔「…かず…な り…?」
見間違えるはずがない
