
仔犬のパレード
第4章 歯
知らない人が居る……?
ニコニコと笑う瞳が見つめる先を追えば
広間へのドアが目に入った
少しだけ開いているドア
俺の位置からは広間の中は覗けない
…
……知らない人って
まず浮かんだのは
翔「…泥棒…」
この言葉
そして不安を煽るのは
翔「潤も居るのか?」
潤の存在
けど
雅紀「翔は来ないで」
その返事は返ってはこない
え?
翔「…なん……って雅紀!」
なんで?と発する前に、俺を追い越し歩き出した雅紀
…
……何言ってんだ
翔「…………んなこと言われたって」
素直に待ってられるか
智に頼まれてんだ
俺には此処を…お前らを、守らなきゃならない
智からもらった役目があんだよ
下を向けば、さっきと何も変わらない和也
その肩が小さく上下する
息は…ある
生きては…いる
翔「和也。待っててな。絶対に死ぬなよ」
そう。願うように声を掛けて
俺はすぐさま雅紀の後を追う
スタスタ
スタスタと。知らない人が居る。にも関わらず
何の警戒心も無さそうにドアノブに手を掛け
いつもの様子で入って行く雅紀
最早、普段起こらない事が起こり過ぎている俺の頭は、既にオーバーヒートしていたのかもしれない
ただ、潤が心配だった
早く、その存在を確認したかった
だから、俺は何の躊躇いもなく、雅紀に続いて広間へと脚を踏み入れた
