
仔犬のパレード
第4章 歯
…あれは……
だだっ広い広間の真ん中に鎮座するソファー
そこに並ぶように立つ影
翔「潤っ!」だ
よかっ……
潤「……ぅ"ぅ……」
ぇ…
良く見れば、その影は2つで
潤の首から何か……違う
手だ
片方の影から伸びた巨大な手が、潤の首を覆う
潤「ぅぐ、………」
ギリギリ…ギリギリと
なに…
なに
翔「っしてんだよ!」
今にも潤の脚は床から浮かび上がりそうで
その顔には血管が浮かび上がり、苦しみに満ちた顔は、みるみると紅黒くなっていく
翔「離せっ…!」
「…あぁ……やぁっと帰ってきたぁのぉ」
翔「っ…」
ゆっくりと動いた影
「もぉ待ちくたびれちゃったやんなぁ……ってあれれれぇ?」
気だるそうに、ぎこちなく振り向いた影
……俺
「…なぁぁんだぁぁ…
出来損ないのボクチャンじゃぁぁん」
ガク。と残念とばかりに首を折る
「さぁとしくん はぁ?」
独特のニュアンスに
独特の訛り
俺…
知ってる
…こいつ 知ってる
「なぁぁ?役立たずのボクチャァン?
さぁとしくんは どぉぉこ行ったんでちゅかねぇ??」
首を折ったまま俺の方を向き
にかぁぁ…と大きな口の端をあげ
こいつは…
そこから覗く、ギラギラと気色悪く光る
金の歯
この歯…間違いない
「ねぇぇ?教えてくれまちゅかぁ?」
にたにたと厭らしく笑う
そうだ
そうだ…思い出した
こいつは……
"猿"だ
