
仔犬のパレード
第4章 歯
グワァ……ァ…ン
グワァ…ァァ…ン…
頭の中で何かが鳴り響く
翔「は…は…」
なんで…?
なんで、こいつが…
翔「は…はぁ…ぁ…」
駄目だ……こいつは………だって
猿「んんんぅん?キチガイのボォクチャン?
お口がなぃんでしゅかぁぁ?」
翔「あ………」
声が…出な……
猿「…もぉ…しょぉがないなぁ…」
そう言ってそいつは
首を掴んだままの潤の方へと頭を向けた
潤「…ぅぐっ……」
…
………まさ…か
翔「っやめろぉぉ!!」
これから、そいつがやろうとするであろうこと
止めようと手を伸ばす
けれど…俺の手は遠すぎる2人には掠りもせず
ただ湿った空気を掻いただけだった
━━ゴリ…っ
潤「ァ………、…」
翔「っ!!!」
聞こえるか聞こえないか潤の喉から出た音
そして
プラ…ン…
そいつの手を掴んでいた潤の両腕が
下へと落ちていく
翔「じゅ…!潤!!潤!!!」
プラプラと
何度か揺れた腕は、潤の脇で動きを止める
翔「じゅ…っ」
その顔は白眼を剥き
カクン。と頭が後ろへと倒れていく
…な……
潤の元へと向けた脚は、言うことを聞かない、最早誰の物かもわからない
縺れ…絡まり
潤へとたどり着く前に、俺は激しく床へと身体を打ち付けた
翔「っ……じゅ……ん…」
猿「あぁ〜あぁ…死んじゃったぁねぇ?」
顔を上げれば、にやにやと笑う
そいつと目が合った
翔「っ…」
…そんな
そんな……潤が…………死…
翔「…、っ…」
視界が霞む
目の前が揺らぐ
俺…俺が………俺のせいで…潤を……!
翔「じゅ…」
雅紀「ワルイヒト ミーツケタ」
………ぇ
何処かから聞こえた雅紀の声
それとほぼ同時に
目の前のそいつに何かが飛び付いた
