
仔犬のパレード
第4章 歯
何かが飛び付いた
その瞬間
グラリ。と潤の体が大きく後ろへと揺れた
っ倒れる!
思うが先か、動いたのが先か
俺は潤目掛けて力の限り床を蹴った
翔「…っ〜…!」
ドサリだか、バサリだか
潤の頭が床に付く寸前で、俺は自分の腕をその間へと滑り込ませた
手にビリリと痛みが走る
今はんなことどうだっていい
翔「潤っ、潤っ!」
潤「……」
…
動かない
薄く開いたままの口元に手を近付ける
…感じない
耳を…胸へと付ける
何も聴こえない……
翔「……そ んな…」
…嘘だ
…嘘だ……
嘘だ!嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ嘘だ!!
翔「潤!起きろ!起きろよっ!」
起きろと、ゆさゆさと体を揺すれば
今や閉じられた瞳
その隙間から、水分がぽたりと落ちた
翔「っ…なんでっ…なんで…!」
動かない 息がない…もう
死んで…………
駄目だ
駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ駄目だ!
死ぬな
死ぬな!
お前は……
お前は智の
大事な大事な宝物なんだよ
何ができる
どうすれば…………考えろ
考えろ考えろ考えろ!このクソ脳ミソっ!!
キリキリと悲鳴をあげる頭
翔「…!」
俺は震える拳を頭上高く持ち上げる
床に寝そべる潤
そのまだ温かい胸
俺は、それ目掛け
強く 拳を振り下ろした
