
仔犬のパレード
第4章 歯
いてっ!と、反射的に何かがぶつかってきた頬に指で触れる
そしてそのぶつかってきた何かは
潤の直ぐ脇に落ち
━コンッ
と、音をたて一度大きく跳ね
コン、コンコン、と何度か小さく弾みながらコロコロと転がり、最後には動かなくなった
…
………なんだ…?あれ…
一瞬、虫でも飛んできたのか
なんて思ったりもしたけれど
コロコロと床を転がった"それ"は、床の上で動きを止めてから一向に動こうとはしない
良く見れば、それには
赤いインクが付いていて…でも所々キラキラと光を反射する
…?
なんだろう
何だか見たことがあるような…
俺は頬に触れていた手を動かし
"それ"に向かって指を伸ばした
…あれ?
そう思ったのは
伸ばしたその指にも赤いインクが付いてたから
不思議に思って、その手を自分の元へと戻し
インクが付いた指をまじまじと見た
…
…っ、
違う……これ インクじゃない…
これは"血"だ
そして
その血は、床に転がる"それ"にもべっとりと付いていて
そうだ…あれは……
歯 だ
あいつが口から覗かせていた 歯
金歯 だ
なんで?
そう思ったのも事実
でも俺の頭の中は一瞬にして、あいつの存在が甦り
ブルッと、身体が震えた
見たくない
そう思うのにそんな気持ちに反して
ギギギギギと…その、歯が飛んできたであろう方向に
ゆっくり…ゆっくりと頭が動いていく
そして俺は
そこにあった光景に、愕然とすることになる
