
仔犬のパレード
第4章 歯
━ガッ…
陽が傾き、橙色に染まっていく広間
━ガッ…
何…
━ガスッ…!
何を…してんだ…?
陽の光がそのモノ達に影を作る
翔「雅紀…?」
腕を振り上げては、下ろし
また、振り上げては下ろす
━クチャ…っ
それは…乾いた音から水気を含んだ物へと変わっていく
翔「…なにして…」
きっと虫の羽音より小さな
俺の喉からは出てきたのはそんな声
拒否する頭とは反対に、凝らした視界は、夕焼けの世界を
多彩へと変えていく
━ガプッ…!
何かに跨がる雅紀。そしてその腕が
振り落とされると
真っ赤な飛沫が宙を舞った
テン…点…点…
それはニコニコと笑う雅紀の顔面に
無数の跡をつけ
やがて、点と点が繋がり線へと変わり
ツー…と、雅紀の頬を伝った
雅紀「ワルイヒト…」
━ガンッ
雅紀「………シ…ネ……」
━ガッ!
翔「…やめ…ろ…」
雅紀の下で、されるがままに
寝転ぶ動くことのない影
雅紀が拳を打ち付ける度に、その頭だけが、人形の様に、グラン。と揺れる
もう…遅すぎたのはわかってた
でも…
…やめろ…
翔「も…やめ…」
雅紀の腕が、更に宙へと高く上がる
雅紀「シ ネ…!」
駄目だ…
翔「雅紀ぃぃ!!」
その血にまみれた腕
俺はそれ目掛けて、手を伸ばした
