仔犬のパレード
第5章 里
『ふ…』
小さく息を吐いて
はた と腫れ上がった瞼を閉じた
時間にしたら、ほんの1,2秒程
瞼を開けると同じくして
その腫れ上がった顔に付いた唇は
ゆるゆると口角を上げる
そしてあるところで止まった口角は
そのまま固定され
『ん』
身体中に付いた傷や痣が嘘のように
先程とは打って代わり、その痩せ細った体をムクと起き上がらせた
バン、と無造作に開いた扉
『224、こい』
男の声
『はい』
声変わりもしていない声で返事をし
静かに扉へと歩みを進めていく
名は、ない
No.224
ただ そう呼ばれていた