仔犬のパレード
第5章 里
《西》の方
No.224に与えられた情報は、対象の顔と名前
そしてなんともざっくりとした方角だけだった
だが、名前や顔がわかっているだけ
かなりましだ
酷いときには、年齢、性別、ちょっとした特徴だけの時もある
No.224は、人が行き交う道の隅に木箱を置き、その隣に細い腰を降ろた
頭に被せてあったキャスケット
それを傷を隠すように深く被り直す
その風貌は
この辺に良くいる"靴磨きの少年"
無論、靴磨きが目的ではない
それに、この少年が、この世でどれだけの人の目にとまるのだろう
空気のように
ゴミのように
無視され、無いものの様に扱われる
愛想の良い微笑み
顔に張り付いた表情のまま
時には、唾を吐かれ
腹の虫の居所が悪い奴にあたれば、蹴られることもある
No.224は、一日中そう過ごし
そして何日かすると場所を変え、人々が行き交う道を見続けた