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仔犬のパレード

第5章 里





無駄とも見えるこの行為
しかし、No.224は無能では無かった


与えられた知識は露ほど
だが、幼い頃より、積まされた経験は嫌でもあったのだ


身に付かされてしまった勘を研ぎ澄ませる


行き交う人々を見て、そして行き交う言葉を聞く


人と言うのは、可笑しなもので
静かな場所だと身を潜め、声を潜めるが
こうも人が多いと、誰も自分達の話なんて聞いていないだろうと、時折警戒心を緩めるのだ


それがこの地で人を探すという手懸かりになる



集めた情報を繋ぎ合わせ
そして、ほどき、また繋ぐ


そうして、太陽と月が何度も入れ替わったころ
No.224は、町外れへの更に寂れたビル街へと辿り着いたのだ



いつもの様に、木箱の脇に腰を下ろし


ニコニコ笑った
様に見える表情で、疎らな歩行者を見続けた






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