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架空ストーリー

第4章 『Voix du soir』

香也さんは改札口の手前で微笑みながら軽く手を上げた。


考えてみればいつだってあの手の振り方だ

あいさつする時も

帰る時も

初めて会った時も


私も同じように返すことにいつしか憧れて

それが今ならできるんじゃないかと

また会う時までの合図を送ろうと思った



でもその時、香也さんの背後に美紀さんがゆっくりと近付いて来るのが見えた


奇妙な笑みを浮かべながら

まるでこの瞬間を小ばかにするように


私は少し頭を下げて振り返らなかった


それ以上見ていたくなくて

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