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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

トイレにつくとすぐにリーダーを見つけた。

「あっ、リ……」

俺はすぐに発した声を途中で止めた。

でもリーダーは何の反応も見せない。

きっと俺の発した声も、そして存在にも気がづいていない。


手洗い場に手をついて、俯き加減に立っているリーダーは微動だにしない。


いや、違う。

小刻みに……震えてる。


発表して初めて俺たちは公の場に出る。

緊張していないと言えば嘘になる。


リーダーなら尚更だって……その姿を見て気がついた。


『当事者』としてリーダーは発言しなきゃいけない。

でもそれは俺たちも同じ。


けど……俺たちは『発端者』ではない。


それがきっとリーダーには大きくのしかかっているんだ。


「リーダー」

脅かせない様に声をかけ、優しく肩を叩いた。

「あっ…ニノ。ごめん、もう……時間?」

メイクしているのをわかっているはずなのに、バシャバシャと顔を洗い始める。

それはさっきまでの気持ちをリセットするかのように見えた。


でもあえてツッコまなかった。


「ううん、まだ大丈夫。体調、悪いの?戻って来ないからみんな心配してたよ」

「あー、ごめんごめん。ちょっと……腹痛くってさ。緊張してんのかな?」

お腹を擦りならが笑って見せるけど、完全にその表情は引きつってる。


リセットは……出来ていない。



「無理しなくていいよ」

「…えっ?」

「バレバレ」

「ははっ、ニノには敵わないな」

乾いた笑いを浮かべた後、ぽりぽりと指で頭をかいた。

「ありのままのリーダーでいいんじゃない?そこにちゃんと想いがあれば……きっと伝わると思うよ」


元々、嘘や誤魔化しが苦手なリーダー。

無理に空元気を出したって、記者会見の様子をワイドショーで見たファンのみんなにはバレる。

それにそんなリーダーを誰も見たくない。


だったら、ぎこちなくたっていい。

言葉が足りなくったっていい。


「大丈夫、俺たちがいるんだから」

だってリーダーの周りには、最強の味方が4人もいるんだから。

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