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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

記者会見当日のワイドショーや翌日の情報番組で、俺たちの休止発表の模様が伝えられる。

会見の会場にいたリポーター、そしてコメンテーターが『嵐らしい』『絆を感じた』と仰ってくれた。

その事がファンのみんなにも伝わってるといいなって思う。

もちろんそれで『はい、そうですか』って受け入れられることではない。


だからこそあの日に発表する事を決めた。


翌日は追加公演の抽選申し込みがスタートする。

俺たちの決断を聞いてどうするかを判断してほしかったし、後悔してほしくなかった。


来年も……という確約はないから。


だからこそこの長期のライブ日程を組んだ。

20周年を迎えた俺たち『嵐』からの感謝の気持ちを伝えること、そして活動休止までに『嵐』としてできることを目一杯やろうって決めた。

俺たちは『嵐』というグループを背負って個々で仕事をしている。

それは休止後も変わらない。


でも5人でいる時にしか見せない俺たちの姿がある。

そして5人だからこそ見せられる俺たちの姿がある。





「終わりました」

「ありがとうございまーす」

前髪をちょんちょんと最後に整えて、俺のメイクは終了。


その一番はきっと……ライブでの俺たち。


休止発表後にレギュラー収録で観覧は入ったものの、こうやってちゃんとファンの前に立つのは初めてだ。


ライブには敵はいない。

完全、ホーム。

『嵐』が大好きなファンのみんなが集まった空間。


観覧の時は大きな拍手で俺たちを迎えてくれた。


じゃあ……ライブは?


そこに『絶対に大丈夫』という保証はない。

そして誤魔化しは効かないし、ない。


ネットや他人からといった間接的な反応じゃない、肌で感じる直接の反応を俺たちは受け入れなければならない。


俺は楽屋を出て、トイレに向かった。


きっとそこには誰よりも『緊張』と『不安』を抱えている人がいるから……

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