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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「大丈夫ですかー?」

確認することなくトイレに入ると同時に声をかける。

リーダーに俺が来たって認識させるため。

「うわっ、ビックリした」

「いい加減、慣れなさいよ」

この一連の流れは1度や2度じゃない。


ってか、俺ってこんなに心配性だったっけ?


いや……きっとそれだけじゃない。

俺にとってはこの行為がリーダーに会った時のルーティーンになっているのかもしれない。


「いよいよ……だね」

「うん」

俺はゆっくりゆっくり気持ちを落ち着かせるようにリーダーの背中を撫でる。

「大丈夫だよ。俺もいるし、翔くんも相葉さんも潤くんもいる。だからさ……」

ゆっくりと身体を離すと不安で揺れる瞳をジッと見つめる。

「ちゃんと俺たちの気持ちを……伝えよ?」


翔くんがいった『誠意』

それを伝えるにはやっぱりライブが一番だと思う。


フィルター越しでもない。

編集もしていない。


生の『嵐』を見て、そして言葉を聞いてもらう。


そこに嘘や偽りはないから……


「ありがとう、ニノ」

「ふふっ、どういたしまして」

いつものふにゃっと優しい笑顔を浮かべる。


うん、これがリーダーだ。



「じゃあ、いっちょやりますか!」

「おうっ!」

「……うわっ」

パンとハイタッチを交わすとそのままグイっと引っ張られた。

「ニノは……大丈夫?」

「えっ?」

「いや、なんとなく…さ」

俺がしていたように優しく背中を撫でられ、ドキッとした心臓が徐々に落ち着いてくる。

「……大丈夫ですよ、私はそんなヤワじゃなです」

「そう?何かあったら、言えよ」

「いいませーん。ほら、行きますよ」

サッとリーダーから身体を離すと、いつもの様にリーダーの手を引っ張って楽屋へ向かう。


こんな時に年上風を吹かしてこないでよ。

ボーっとしているように見えて勘が鋭いんだよな……


俺は大丈夫。

今は、リーダーのフォローが最優先なんだ。

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