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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「指、ちぎれるかと思った。いるなら早く出ろよぉ」

ドンとテーブルにコンビニの袋を置くと、荷物を持っていた手をグッパする。

「ごめんごめん。ってか、こんな時間に来るなら連絡してよ。不審者と思うじゃん」

「あっ、そっか……」

言われて初めて気がついたみたいで、当たり前のことがすっぽ抜けていたリーダー。


そんなに慌てて来たの?


「ねぇ……何かあったの?」

「とりあえず、飲まね?」

サラッと俺の言葉を交わすと、コンビニの袋からポンポンとお酒を取り出していく。

「あ、うん……」

追求したい気持ちもあるけど、お酒が入った方がしゃべりやすいのかもしれない。

「これ、持ってってくれる?」

「おう」

飲む分だけをリーダーに預け、残りは冷蔵庫。

一緒に買ってきたつまみ類をお皿に乗せて持っていく。

「とりあえず……乾杯すっか」

「うん。じゃあ……「乾杯」」

プルタブを開けると、コツンと缶ビールをぶつける。

「ニノ……飲み過ぎじゃね?」

「えっ、そう?」

自分の中ではいつもと変わりないし、飲み過ぎって量でもない。

「今日、飲み会じゃなかった?」

「え、あ……まぁ」


そうだ、リーダーは知ってたんだ。

収録終わりに相葉さんに飲みに誘われてたけど、『先約がある』っていって断ったんだ。

「飲まなかったの?それに帰ってくるのも早くない?」

持っていた缶ビールを置き、俺をジッと見つめる瞳は何かを探ろうとしている。


本音を吸い取られそうになるのを必死に堪える。


今は俺が甘えちゃ……いけない。

リーダーの負担になっちゃ……いけない。


「ってか、飲み会って知ってるのに何で来たの?いない可能性あるって思わなかったの?」

その為には話題を変えるしかない。

「思わなかった」

「なに、その自信満々の返事」

「だって、全然楽しそうじゃなかったから」


冗談っぽく流したかったのに……

なんでそんな事だけ色々と鋭いんだよ。

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