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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「楽しくないわけないでしょ」

「人のことばっか言ってるけど、ニノも同じだかんな」

「ふぇっ?」

顔を逸らそうとした俺の頬をムニっと掴んで捕まえる。

「バレバレだかんな」

何もかもお見通しとばかりにふにゃっと俺に笑いかける。


止めてよ……

その笑顔に全て吐き出しそうになる。


「そんな状態で睨んだってこわくねーぞ」

揺れる心を必死に抑えるために自然と表情は強張る。

「もー、痛いっ!」

ペチンと頬を掴んでいた手を叩いて払い退ける。

「俺はだいじょ……」

「大丈夫じゃないだろ?」

どこへ行くでもないけど立ち上がってリーダーから離れようとしたのに、腕を引っ張ってソファーに戻される。

「気を張らなくてもいいじゃん。俺らの前くらい」

「張ってなんか……」

プイっとそっぽを向いて優しいリーダーの視線から逃げる。

「ほーら、こっち向く」

今度は温かいリーダーの手が俺の頬を包む。


ダメだ。

もう……耐えられそうにない。


「ごめん…っ、ちょっとだけ」

俺はリーダーの肩に頭を乗せて、身体をそのまま預けた。

「いーよ、いくらでも」

猫背になっているであろう背中を上下にゆっくりと撫でてくれる。

「なにが……あった?」

きっと吐き出すと楽になると思って俺に問いかけてくれてるけど、こればっかりは絶対に言いたくない。


『お前は俳優としてやっていける』

その言葉を思い出して思わず、リーダーの服の裾をギュッと掴んだ。


活動休止したって俺は『嵐』であることに変わりはない。

それは翔くんも相葉さんも潤くんも同じ。


もちろん芸能活動を休止するリーダーも。


『嵐』は消えない、消えさせたりなんて……しない。


なのに……

『嵐』が戻ってこないような言い方するな!

リーダーが……戻ってこないような言い方するな!


リーダーは……

リーダーは……


ずっといるんだ。


でも……

でも……

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