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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「ふふっ、やっと止まったな」

涙を拭ってくれた手が今度は俺の頭を優しく撫でる。


そりゃ、止まるに決まってる。

だって俺はビックリしているんだから……


「ん、どうした?」

平然と俺に聞いてくるリーダー。


えっ、なんでそんなに冷静なの?

自分がしたことに気がつていない訳……ないよね?


「いや……だって今、俺に……さ」

口に出すのも恥ずかしいというか何というか……

頭の中でさっきの出来事が処理できていない。

「えっ、あ……チューした」

「ちゅっ、ちゅーって!」

思い出した!みたいにストレートに事実を口にする。


ハッキリ言わないで!

そして何でチューなんて可愛い言葉を使うの!

いや、俺の疑問はそこじゃないそこじゃない!


完全に俺の頭はパニック状態。


「えっ、違った?」

「違わ…ない。違わないけど…さ」

いつもと変わらないリーダーに俺も不思議と段々、落ち着きを取り戻すと途端に恥ずかしくなって視線を逸らした。


間違ってないから否定が出来ないけど……

俺のツッコミたい部分はそこじゃない。


でもそこをどうツッコんでいいかもわからない。


「……嫌だった?」

下を向いた俺の頬を包み、顔を上げると自然と合わさる視線。


さっきまでいつもと変わらなかったのに……

合わさる瞳だけはゆらゆら揺れる。


「嫌じゃ…ない」

それだけは断言できる。


ビックリしたり……

恥ずかしかったり……


感情はたくさんあったけど、そこに嫌悪感は微塵もない。


寧ろ、触れられた部分が今でも温かいとさえ思う。


リーダーがくれた温もり。

今、リーダーは間違いなくここにいる。


俺の前に……いるんだよね?


「リーダー」

俺はリーダーの頬を包んた。

掌から伝わるリーダーの体温。


もっと温もりを感じたくて……

顔をゆっくりと近づけ、リーダーの唇に俺のそれを重ねていた。

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