テキストサイズ

まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

一瞬で離れた唇はまた吸い寄せられるように重なった。

女の子のようにプルっ潤いのある唇じゃなくて、互いにちょっとカサカサ。


でも……温かい。


ちょっとずつ、ちょっとずつ、重なる時間が長くなる。

その温かさを……もっと感じたい。


「ニノ」

至近距離で優しく俺の呼ぶと、スルッと頬を撫でる。

「リー……んっ」

呼び返す前に塞がれた唇は今までより少しだけ強く押しつけられ、その存在感を増す。

そして僅かに開いていた隙間から遠慮がちに入ってきたのは舌だってすぐにわかった。


男同士だとか……

ましてやメンバーだとか……

客観的に見ればあり得ない状況で、本人たちですら引きそうだ。


でも今はその温かい舌を招き入れ、自らも舌を絡めていた。


互いから聞こえる水音と鼻から抜ける吐息。

そして俺の舌を優しく包み込むようなリーダーの舌の動き。

口内、そして身体がだんだんと温かくなっていく。

互いに苦しくなってきて唇を離すと、俺たちを繋ぐ糸がスーッと伸びて切れる。


なんだかそれが無性に悲しくなった。


『5人の絆』『嵐の絆』なんてみんなは言うし、俺たちもそれがあると思う。

リーダーが言っていた、俺たちは仕事仲間でもなく家族でもなく『嵐』という新たな枠が出来て、それは宝物だ。


でもそれは形としては見えない。

そして手に取る事も出来ない。


確かだけど……不確か。


わかっているのに、求めてしまう。

今だからこそ、どんな形であってもそれを実感したい。


それは翔くんでもなく、相葉さんでもなく、潤くんでもない。


「リーダー」

今、目の前にいるあなたから……

リーダーからじゃないと意味がない。


俺はリーダーに抱きついた。

ギュッと……ギュッと……


当たり前のように一緒にいることがそうじゃなくなるってわかってから、俺にとってリーダーが嵐としてだけでなく、自分自身にとってどんな存在だったのか……

ストーリーメニュー

TOPTOPへ