まだ見ぬ世界へ
第2章 愛のカタマリ
「張り切り過ぎじゃない?」
母さんに『ご飯ができた』と言われリビングに来たら、成長期の体育会系の人が食べるのかっていうくらいのボリュームのおかずがテーブルに並ぶ。
「食べれるでしょ?高校生なんだから」
「いや、流石に無理っしょ」
俺の体型を考えて?
「腹減ったー!おっ、うまそー」
「こら、つまみ食いしないの。主役がまだなんだから」
少しげんなりしている俺にひきかえ、から揚げを頬張る潤は食べる気満々。
コイツまだ……成長する気か?
「おー、すんげー!豪華じゃん」
遅れて翔兄もリビングにやってきた。
「ほら、翔も来たし……みんな座って?あたな、新聞しまって下さい」
読んでいた新聞を畳むと、久しぶりにリビングに家族が揃った。
「じゃあ、食べましょう」
パチンと母さんが手を合わせると、俺たちも釣られるように手を合わせた。
「いただきます」
「「「いただきまーす」」」
母さんの声の後、兄弟3人の声がリビングに響いた。
元々小食な俺と親父とは違い、翔兄と潤の箸は幾度となくおかずに伸ばされ、口へと運ばれていく。
見てるだけで……マジ、お腹いっぱい。
「おいっ、それ……俺んだぞ!」
「いや、俺が先に取った」
お皿に残った最後の餃子に、翔兄と潤の箸が同時に伸ばされた。
「俺の好物だ」
「俺は成長期」
食べ物の取り合いが絶えない2人に、昔はそわそわしたけど今は何だか懐かしく思える。
「翔兄、これ食べていいよ」
お皿に取っていた餃子を差し出した。
「いいのか?」
「俺、お腹いっぱいだもん」
「サンキュ…って、おい!」
「翔兄だけずりーだろ」
2つあった餃子はあっという間に2人それぞれの口に運ばれ、再び残りの餃子に目はロックオン。
「いい加減に落ち着け」
「「あっ……」」
最後の一個は親父の口に運ばれ、呆然とする2人を母さんと2人で笑った。