まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
全力で駆け抜けた2年間はあっという間だった。
この日が訪れなければいいにと思っても時計の針は止まる事なく動き続け、そしてその時を迎えた後も時計の針は動き続ける。
でも『嵐』としての時間だけがもうすぐ止まる。
嵐として休止前の最後のステージはカウントダウン。
5人で紅白歌合戦の司会という有難いオファーもあった。
でも引き受けた場合、カウントダウンには参加できない。
以前の様に遅れの参加という選択肢が俺たちにはないから……
だから俺たちは休止前の最後をステージ、そしてテレビを見ているファンの前で『5人』でいることを選んだ。
そして誰よりも俺たちが『5人』でいる事を望んだ。
俺たちはいつもの様に円陣を組む。
「じゃあ、休止前ラスト……気合入れていくぞ!」
「「「「おー!」」」」
潤くんの掛け声、そして俺たちの声がステージ裏に響く。
そして目を合わせ、握手を交わす。
いつもは潤くんが最後なんだけど……今日はリーダー。
「よろしく」
握手を交わし、目を合わせて互いに頷くとポンと軽く肩を叩いだ翔くん。
「頑張ろうね!」
ニカッと笑って握手したまま腕がちぎれるくらいにブンブン手を振る相葉さん。
「痛い、痛いっ」
強く握りしめて握手しているのか、ニヤニヤ笑っている潤くんと悲鳴を上げるリーダー。
最後は俺。
スッと手を伸ばすと、リーダーも手を伸ばす。
「おまっ、止めろよ!」
でもその手をサラリと交わしてケツを揉んでやった。
「ふふっ、よろしくお願いします」
改めて手を伸ばすと、改めてちゃんと握手を交わした。
その手を離したくない。
でもギュッとリーダーが俺の手を握りしめると、その手は離れていった。
「スタンバイ、お願いしーます」
「「「「「はい」」」」」
リーダーを真ん中に、俺たち5人は並んだ。
「次は……嵐だ!」
司会の太一くんのあとに聞こえた大歓声と共に、俺たち5人を乗せステージがゆっくりとせり上がった。