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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

「どうも、ありがとうー!」

メドレーを歌い終えた俺たちは最初に出てきた場所に戻ると、また同じように並んだ。

「ありがとう、バイバーイ」

リーダーが笑顔で大きく手を振ると、ゆっくりとせり下がるステージ。


2021年1月1日まであと1分少々。


「「「「「ありがとう」」」」」

俺たちは手を繋いで掲げて見せると深々と頭を下げた。


明るかった視野が徐々に暗くなり、ガタンと音をたててステージが止まった。


「21年まであと50秒」

太一くんの声が聞こえる。



もうすぐ2021年を迎える。



それはいつものキラキラ輝くステージではない。


「ほら、一緒にカウントダウンするよ」

相葉さんに促されると俺たちもステージ裏に移動して、映し出されたモニターを見つめる。

そして右端に表示される数字が段々と減っていく。



俺にとっては2021年へのカウントダウンではなく、嵐休止のカウントダウン。


当たり前の様に俺たちは手を繋いだ。


隣にはリーダー。


チラッと横目で見ると、目が合って……

ニコッと俺に笑いかけてくれた。


だから……俺も笑って見せた。

頑張って……笑って見せた。


「「「「「5…4…3…2…1…ハッピーニューイヤー!」」」」」

ステージの特殊効果の音と共に、俺たちはジャンプをした。

「久しぶりにこうやって一緒に新年、迎えたね!」

相葉さんが嬉しそうに俺たちを見つめる。

相葉さんが最初に個人で司会をしてから、俺、翔くん、潤くんと司会が続いたから5人でNHKホールから東京ドームへ移動することはなかった。

「毎年……全力疾走してたな」

懐かし気に呟くリーダーは遠くを見つめていた。


そっか、過去…なんだ。


「お疲れさんでした」

「お疲れ、リーダー」

「お疲れ」


ねぇ、その労いの言葉って……どっち?


「運動不足解消には良かったんじゃない?」

「それはニノだろ?」

「止めろやー」

衣装の上からお腹を触ろうとするリーダー。


俺はみんなに続いてその言葉を言えなかった。

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