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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

コンコン…


楽屋のドアをノックする音が聞こえて立ち上がろうとしたけど、身体に力が入らない。

「ニノ、ごめん」

グイッと身体を潤くんに引き上げられると、引きずられるように椅子まで連れて行かれた。

「テーブルに伏せてな」

隣に座った翔くんの指示通り、俺はテーブルに伏せる。

「はーい、どうぞ」

相葉さんがいつもの様に元気に返事をしてくれる。


チームワーク……抜群過ぎ。


「失礼します」

聞き覚えのある声。

「マネージャーだ」

こそっと俺に耳打ちしてくれた翔くん。

「どうしたの?……ってか、リーダーは?」

「帰り…ました」

ちょっとケンカ腰の潤くんの口調に戸惑っているのが声色から伺えた。

「知ってたの?先に帰るって」

「はい……すみませんでした!」

「別に責めてるわけじゃないから。自分にイラついてるだけ」


潤くんが自分を責める理由なんてない。

マネージャーが俺たちに謝る理由なんてない。


「止めたけどダメだったんでしょ?ああ見えて、頑固だからね。聞かなかったんでしょ?」

翔くんがマネージャーをフォローしてくれる。


滅多に出ない『頑固』な部分が出たんだろう。

そんな時は自分の意思を決して曲げない。

だからこそ、周りはそれを受け入れるしかない。


「はい、でも……私の力不足です」

「もういいってば。ほら、顔上げて?」

必死に相葉さんが頭を下げているであろうマネージャーに声をかけてくれている。

「ごめん…ね、辛い役回りさせちゃって」

「二宮…さん」

泣き顔を見せると余計に自分を責めるとわかっていたけど、俺も声をかけずにはいられなかった。

「ホント……迷惑かけん…なっつーの!」


笑いたいのに……

強がりたいのに……

流れる涙を止めることが出来なかった。


ピコピコッ…


突如、同時に楽屋に鳴り響いたLINEの通知音。

「きっと、リーダーからだっ!」

相葉さんと同じ考えの俺たちは、慌てて自分のスマホを手に取ってタップした。

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