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まだ見ぬ世界へ

第5章 さよならの恋人

【ありがとう、翔くん】



「短いけど、大野くんらしいね」

クスッと優しく笑う翔くん。



【ありがとう、相葉ちゃん】



「こちらこそありがとう」

スマホにペコっと頭を下げる相葉さん。



【ありがとう、松潤】



「お礼は面と向かって言うものだろーが」

口調は怒ってるけどちょっと照れ顔の潤くん。







【ありがとう、和也】



「急…にっ、馴れ馴れしく…呼ぶんじゃねーよ。気持ちっ、わりーわ、マ…ジで」


ずっと俺はリーダーと呼び続けた。


下の名前で呼ぶこと。

それは恋人としての最後の一歩。


それを踏み出してしまえば耐えられないと思った。


いつか来る別れを『恋人』として迎えることなんて出来ない。


メンバーとして呼び続ければ嵐として、そして芸能活動を休止するリーダーとして別れを受け入れられるってそう思った。

例えそれが自分の気持ちを誤魔化す形であったとしても。


なのに……

なのに……


何で軽く飛び越えちゃんだよ。


それも、なんで今なんだよ。


せめて呼ぶなら……俺の前で呼んでよ。


「智…っ、さと…し、智ぃぃぃぃぃ!」

初めて呼んだ名前。

でもどんだけ大きく叫んだって聞こえない。


返事もなければ、姿もない。



なんにも……ない。



「ニノ…っ」

ガバッと勢いよく相葉さんが俺を抱きしめた。

「智…っ、さと…しっ」

「いっぱい泣いて、いっぱい叫べばいい」

後ろから翔くんがギュッと抱きしめてくれた。

「何にも気にするな。俺らしかいないんだから…な?」

クシャっと髪を撫でてくれた潤くん。

「はい……失礼します」

マネージャーの声が聞こえたと、バタンと音を立ててドアがしまった。


俺は泣いた。

そして叫んだ。

涙が枯れるまで……

そして声が枯れるまで……


俺の大好きな『智』は一瞬だけ恋人になって……そしていなくなった。

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