まだ見ぬ世界へ
第5章 さよならの恋人
「ごめん、遅くなって」
個室のドアを開けると、3人はすでに到着していた。
「おー、主役の登場!」
さっき来たであろう翔くんはわしゃわしゃとおしぼりで顔を拭いている。
元々板についてたキャスターに拍車がかかり、国内だけなく海外も飛び回っている。
この前、どこかの首相?大統領?とのツーショットの写真を送ってくれた。
「もー、早くビール飲みたいっ!」
先に出されていたビールを飲み干したのか、グラスが空っぽの相葉さん。
相葉さんも海外にロケに行く機会が多く、それも身体を張った体当たり。
この前、ブランコみたいにゾウの鼻に乗ってる動画を送ってくれてた。
「テキトーに注文するな」
潤くんのセッティングのお店だから慣れた手つきでタッチパネルで注文していく。
潤くんはドラマや映画、そしてもうすぐ主演・演出の舞台の準備で大忙し。
この前の送ってくれたポスター撮りの写真は派手な衣装より顔のインパクトの方が目立ってた。
近況はグループLINEでお互いに報告しているから、久しぶりな感じはしないけど、実際にこうやって4人で会うのは翔くんの誕生日以来。
4人で一緒の仕事ての無いだろうし、誰かと誰かってのは番宣とかであるかもしれないけど、現時点での予定はない。
そうなると『仕事終わりにご飯に……』なんて機会はなく、ホントたまーに相葉さんとご飯に行くくらいで、翔くんと潤くんとはない。
まぁ、考えてみれば前までが会い過ぎだったのかも。
だから……元の俺たちに戻った。
いや、違う。
『俺たち』の中にリーダーの存在はない。
翔くんの誕生日祝いで集まったのも『4人』
近況をLINEで報告するのも『4人』
俺の誕生日祝いで集まったのも『4人』
あの日、リーダーが姿を消したその時から『5人』になることは無かった。
でも唯一残された『5人』でいられる場所。
それがグループLINEだ。