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まだ見ぬ世界へ

第2章 愛のカタマリ

【潤side】


来るべき日が来た…か。


濡れた髪をタオルで拭きながら、少し前の出来事を思い返す。


ショックで立ち尽くすカズ。

今にも震えそうな背中を抱きしめたくて仕方なかったけど、何とか気持ちを抑えて背中を押した。

まさか兄貴の誕生日にこんな形でひとり暮らしを始める事が、カズに伝わるとは俺もそして兄貴も思っていなかった。

お袋がポロっと言った事になんの悪気もない。


自分が決めておいて伝えず逃げていた兄貴が悪い。


自業自得。



俺だってずっと……我慢してきたんだ。



カズをずっとそばで見てきた様に、兄貴もずっとそばで見てきた。


だから嫌でもわかった。


カズが誰を好きかを……

兄貴が誰が好きかを……



だから必然的に互いを想い合っていることもわかった。



カズの事はいくら兄貴であっても譲れない。



そう思ったけど……兄貴ならとも思った。


頭も良くって、誰からも慕われる存在。

いつも兄貴の周りには兄貴を慕う人がいた。



そして俺もその一人。



尊敬している兄貴だからこそ、溢れだしそうな自分の気持ちに蓋をしてきた。

なかなか想いを断ち切る事ができないけど、2人が恋人同士になれば反対するつもりもないし、そうなれば俺の気持ちにも区切りがつくと思ってた。


なのに……

兄貴はカズを傷つけた。


兄貴はきっとカズの気持ちに気づいている。


俺に向けられる事のないカズの想いを、兄貴は一心に受けられるのに……


俺は……

俺は……

こんなにカズを想っているのに……


何で逃げる必要があるんだ。


カズの気持ちを無下にするんだったら俺はもう……

遠慮しない。


傷ついた心に入り込む卑怯な手段を使ったって手に入れてみせる。



カズのすべてを……



開くことのない兄貴の部屋のドアにそう伝えると、俺はカズのいる自分の部屋へと入った。

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