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まだ見ぬ世界へ

第6章 俺の名は

足早に浴室に入り、シャワーのノズルを回す。

ザーッという音は確実に浴室内の音をかき消してくれる。

そう確信した俺は、さっき触れた潤くんのに再び手を伸ばした。

そして潤くんのモノを掌で包み込み、ゆっくりと上下に動かすと少しずつ大きくなっていく。

潤「あっ、いい…っ」

そう思っているのは潤くんの身体の中にいる俺だけど、漏れる声は潤くんの声。

そしてそうさせているのは潤くんの手だけど、その手を動かしているのは俺の意思。


そう……潤くんの身体は俺の意思で動いている。


それが俺を不思議な感覚にさせる。


二『ねぇ、気持ちいい?潤くん』

頭の中で俺が潤くんに向けて問いかける。


潤「いいよ…っ、ニノ」

自分で自分の名前を呼ぶ。

自分で自分の行為を褒める。


それが潤くんの声として発せられ、中にいる俺に届く。


その言葉はまるで潤くんが俺に言ってくれてるみたい。


快感で閉じていた瞼をゆっくりと上げ、バスチェアに腰かけると目の前には曇った鏡。

それを手で擦ると、鏡に映し出されたのは潤くんの顔。

鏡の中の潤くんは真っ直ぐ前を見つめている。


その瞳はまるで潤くんのが俺を見てくれているみたい。


全てが……

潤くんの中の俺に向けられている。


そんな風に錯覚してしまうのは、俺自身がそうなればいいと望んでいるから。


そしてそれを今、潤くんの身体を使って擬似体験している。


俺は反り立ったままの潤くんのモノに再び手を伸ばした。

そして溢れ出る先走りを纏わせてラストスパートをかけた。

潤「ヤバっ、イきそ…っ」

二『イっていいよ?』

頭の中で快感に耐えるように眉間に皺を寄せる潤くんが写る鏡に向かって囁いた。

潤「イく…っ、ああっ!」

潤くんのモノから吐き出された欲を掌で受け止める。


俺が潤くんの身体を使って潤くんのことを気持ちよくした証。


でもそれは出しっぱのシャワーで呆気なく流され、跡形もなく消えた。

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