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まだ見ぬ世界へ

第6章 俺の名は

【?side】


ドンッ…

静かな玄関に響いた衝撃音。


潤「いってぇぇぇ…」

二『いったぁぁい』


後頭部と額に激痛が走って思わず蹲った。

勢いそのまま飛び込んでいったけど、考えてみれば随分無謀なことした。

体形差を考えたら、俺の姿をした潤くんが潤くんの姿をした俺を受け止められるはずがない。

『ニノ、大丈夫……えっ?』

心配して声をかけてくれた潤くん。

でも……俺の名を呼ぶ潤くんの声だった気がした。

「大丈夫な訳……えっ?」

俺の声は気のせいじゃない。

俺自身の声が俺から発せられた。


ゆっくりと顔を上げると俺と同じように額を押さえる潤くんが目の前にいた。


『ニノ…だよな?』

「潤くん…だよね?」

潤くんの唇が動いて、潤くんの声で俺の名前を呼ぶ。

俺の唇が動いて、俺の声で潤くんの名前を呼んだ。


そして俺たちはコクリ頷いてお互いに返事をした。


『戻った……戻ったな、俺たち』

「うん、元に戻ったね。俺たち」


あぁ……潤くんだ。


いくら俺が演技が上手くたって、こんな風にニカッと笑う事は出来ない。

俺のずっと見てきた大好きな笑顔。


『ニノ』

潤くんの手が俺の頬を包み込むとゆっくりと細くて長い綺麗な指が輪郭をなぞっていく。

「潤……くん?」

こんな風に真っ直ぐに見つめられたことがなくて、どうしたらいいかわからない。

それに触れられた部分から伝わってしまうんじゃないかってくらい鼓動が煩い。


風呂場で擬似体験した時とは違う。

これが……触れられるってことなんだ。


「俺……ニノに言わなきゃいけない事がある」

『俺も……潤くんに言いたい事がある』

言いたい。

本当はすぐにでも俺の気持ちを伝えたい。


でも……欲張ってもいいかな?


「けど……潤くんから聞かせてくれる?」

真っ直ぐな瞳に見つめられて潤くんの言葉を聞きたいって思った。

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