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まだ見ぬ世界へ

第8章 幸福論【再会】

「確認が取れましたので、これで失礼いたします」

連絡しておいた見届け人と呼ばれる人が、俺たちの姿を玄関で確認するとすぐに帰って行った。

「もう……終わり?」

「そうみたいだね」

身構えていた俺たちはただただ、呆気にとられた。


このマッチングシステムは優秀な『α性』を生み出す為の国家プロジェクトといっても過言ではない。

その為、逐一『日本プラチナデータ機構』に報告をあげなければならないらしい。

特に初対面……って俺の場合は兄弟だから少し違うけど、
いつ会うのか、どこで会うのかの報告、そしてその場での目視での確認が義務付けられている。


マジで面倒くさいけど、それをしなければ和也側に罰金が科せられる。

それが例え、『α性』が原因であったって変わらない。


どんな時だって『Ω性』は見下され、不利な立場になり、そして逃げ場を奪っていくだ。


「じゃあ、私たちも出かけるわね」

「「えっ?」」

振り返ると父さんと母さんの姿があって、あっという間に俺たちの横を通り過ぎていった。

「出かけるの?」

「そうよ。何か問題でもある?」

「ないけど…さ」

和也がヒートを起こすまではまだ期間があるから、互いに暴走することは無いし、念のために薬は飲んだって聞いたから心配はしていない。


でも急に2人っきりってなると、何から話していいのかわからない。


「変に意識しないでいいのよ?」

「えっ?」

まるで俺の心を読んだかのような母さんの言葉にちょっとビックリした。

そして俺たちに諭すように話を続けた。

「話すことはいっぱいあると思う。将来に関わる事だから不安もあると思う。でもね……今日、結論を出すものではないでしょ?和也もまだ会う人がいるんだし」


そう、和也の結婚相手の候補は俺だけじゃない。


他の3人が和也に会ってどう想うか。

和也が他の3人に会ってどう想うか。


俺はなにより和也の気持ちが第一だって思ってる。

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