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まだ見ぬ世界へ

第2章 愛のカタマリ

「翔兄」

「ありがとう」

潤の背中を見つめていた翔兄に手を伸ばしたら、ギュッと俺の手を握ってくれた。

「うわ…っ」

グッと引っ張って立ち上がった翔兄が今度は俺を引っ張った。


ドクドクと高鳴る鼓動は俺のモノなのか……

もしくは抱きしめられて伝わる翔兄のモノなのか……


「あの……俺……」

いつの間にか翔兄の腰に回していた腕。

ギュッと服を掴み、勇気を振り絞って伝えたい言葉を探す。

「ちょっと待って」

ガバッと肩を掴んで俺を引き離す。

「俺が言うから」

俺を見つめる瞳はいつもの優しい眼差しじゃなくて、射抜くような強い眼差し。

「俺、カズの事……」


ガチャ…


「やば…っ、カズ来い」

静かに翔兄の言葉を待っていたらドアの開く音が聞こえて、慌てて俺の部屋に引っ張られた。

「なんだよ、マジで……」

撫で肩が更に力なく垂れさがる。

「ふふっ」

「なに、笑ってんだよ」

「翔兄っていつも『ここぞ』って時、ダメだよね」


決めなきゃいけないって時に噛んだり、ありえない失敗したりするんだよね。


「うっせー。今日は大丈夫だ」

「ホントに?」

「俺を揶揄うなんて……随分、余裕だな」

「ふふっ、そう?」

溢れ出る嬉しさを抑える事ができない。


ずっと塞ぎこんだままだった気持ち。

潤と一緒に過ごしたら忘れられるかもって思ったけど、翔兄への想いは募るばかりだった。

それが結果的に潤を傷つけてしまった。


ゴメンね、潤。


でもその言葉はもうこれで最後。


潤のお陰で翔兄と向き合う事ができた。

潤のお陰で翔兄の気持ちを知る事ができた。


「カズ」

いつも俺に伸ばしてくれた手が頬に触れた。

「好きだよ」

「うん、俺も……好き」

翔兄の顔がゆっくりと近づいてくるから目を閉じる。

「…っ、痛ってぇ」

触れた瞬間に苦痛の声をあげる。

「やっぱり……決まんないね」

「潤、あとで覚えてろよ」

赤く腫れた部分を押さえる翔兄が苦笑いを浮かべた。

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