まだ見ぬ世界へ
第2章 愛のカタマリ
「ごちそうさまでした。あっ、今日晩御飯いらないから」
遅めの朝食を掻き込むと、洗い物をしている母さんの背中に声をかける。
「えっ、カズくんもいらないの?」
濡れた手を拭きながら振り返る母さんは少し嬉しそう。
『も』って事は……
「潤も出かけるの?」
「うん、いらないって。ふふっ、ラッキー。今日はお父さんと外食しようかしら」
「いいんじゃない?たまには楽しても」
「そーよね。あっ、ここに置いといて」
指示されたシンクに食べ終わったお皿を置くと、鼻歌交じりにスマホを操作する母さんのは触れず部屋へと戻った。
ガチャっと部屋を開けると着替え終わった潤の姿。
「出かけんの?」
「うん、新しくできた友達なんだけどね。カズも暇だったら一緒に行くか?」
「いや、俺は今日…さ」
別に隠す事でもないし、はっきり言えばいいんだけど……
「ふーん、そう言う事……兄貴ん家、行くんだ」
下を向く俺をニヤニヤ顔で覗き込む潤。
「べっ、別に……勉強、教えてもらいに行くだけだしっ!」
真っ赤であろう顔を隠すように、タンスから着替えの服を取り出す。
「別に何も言ってねーし。でもその割にはオシャレな服……選んでない?」
「うっ、煩い!」
俺はバッと服を脱いで着替えを済ませる。
「あっ、そうだ。兄貴にこれ、渡しておいて」
姿見で髪型をちょんちょんと直している俺に小さな紙袋を渡してくる。
また……ニヤニヤしやがって。
「なに、これ」
「兄貴の引っ越し祝い。見んじゃねーぞ」
「怪しいんだけど」
「怪しいのはどっちだよ」
ジト目で見たって俺と翔兄の関係を知っている無敵な潤に勝てっこない。
ピンポーン…
普段あんまり鳴らないインターフォン。
「じゅーん、お友達が来たわよー!」
「やべっ、もうこんな時間かよ!カズのせいだぞ」
「それはこっちのセリフだし!」
2人、慌てて部屋を出た。