まだ見ぬ世界へ
第8章 幸福論【再会】
母さんたちが出ていった後、広々したリビングで話すのもどうかと思って、和也の部屋に行くことになった。
あの日以来、入る事のなかった和也の部屋。
本音を言えば俺の部屋が良かったんだけど、引越しの荷物が片付いていないから落ち着いて話せる環境になかった。
「おじゃましまーす」
「ぷっ…なにそれ」
自分でも柄にもない事を言った自覚はある。
でもどうにか緊張感を解したいというか、無言状態にはしたくなくて発した言葉に和也も反応してくれて笑ってくれた。
「ずっとデスクワークか?」
和也の部屋には俺が出て行くときには無かったパソコンが存在感を放っていた。
「うん……やっぱり外には出づらいからな」
元々インドアタイプの和也だから、家で過ごす事は苦痛では無いはず。
でも『自由』という言葉は和也にはない。
どこに行こうとも『危険』という言葉がつきまとう。
「なにかしたい事は、あるのか?」
『したい事……うーん、考えた事ないかも』
軽い口調で答えたけど、それは悲しい言葉に思えた。
和也にとってそれは『Ω性』で生まれた以上、仕方ない事で当たり前の事なのかもしれない。
そう考えると俺は、幸せなのかもしれない。
自分がしたい事をすることが出来て、それが仕事になっている。
「あっ、でも別に不満はないよ。俺は恵まれてる。文句なんか言ったらバチが当たるよ」
俺の表情に何かを察したのか必死にフォローしてきたけど、その言葉には嘘がない事を示すように優しく微笑んだ。
「そっか。なら、良かった」
クシャっと和也の髪を撫でた。
無意識だったその行動を意識した瞬間、その手はピタッと止まってしまった。
「あ…悪い」
サッと俺はその手を引っ込めてた。
こんな風に喋れている事だって、俺がした事を考えれば奇跡なのかもしれない。
俺自身の存在を拒否されても仕方ない。
そんな俺が触れるなんて……嫌に決まってる。
あの日以来、入る事のなかった和也の部屋。
本音を言えば俺の部屋が良かったんだけど、引越しの荷物が片付いていないから落ち着いて話せる環境になかった。
「おじゃましまーす」
「ぷっ…なにそれ」
自分でも柄にもない事を言った自覚はある。
でもどうにか緊張感を解したいというか、無言状態にはしたくなくて発した言葉に和也も反応してくれて笑ってくれた。
「ずっとデスクワークか?」
和也の部屋には俺が出て行くときには無かったパソコンが存在感を放っていた。
「うん……やっぱり外には出づらいからな」
元々インドアタイプの和也だから、家で過ごす事は苦痛では無いはず。
でも『自由』という言葉は和也にはない。
どこに行こうとも『危険』という言葉がつきまとう。
「なにかしたい事は、あるのか?」
『したい事……うーん、考えた事ないかも』
軽い口調で答えたけど、それは悲しい言葉に思えた。
和也にとってそれは『Ω性』で生まれた以上、仕方ない事で当たり前の事なのかもしれない。
そう考えると俺は、幸せなのかもしれない。
自分がしたい事をすることが出来て、それが仕事になっている。
「あっ、でも別に不満はないよ。俺は恵まれてる。文句なんか言ったらバチが当たるよ」
俺の表情に何かを察したのか必死にフォローしてきたけど、その言葉には嘘がない事を示すように優しく微笑んだ。
「そっか。なら、良かった」
クシャっと和也の髪を撫でた。
無意識だったその行動を意識した瞬間、その手はピタッと止まってしまった。
「あ…悪い」
サッと俺はその手を引っ込めてた。
こんな風に喋れている事だって、俺がした事を考えれば奇跡なのかもしれない。
俺自身の存在を拒否されても仕方ない。
そんな俺が触れるなんて……嫌に決まってる。