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まだ見ぬ世界へ

第8章 幸福論【再会】

和也のベッドの近くに椅子を持っていき、腰かけた。

「和也は……誰を選ぶんだ?」

髪を優しく撫でながら問いかけをしてみたけど、もちろん寝ている和也からの答えは返って来ない。



時が経って同じ問いかけをした時、和也はなんて答える?



櫻井翔。

松本潤。

相葉雅紀。


この中の誰を選ぶんだろうか。

って、俺……もう名前覚えてるし。


和也が相手を決め『番』の契約をすれば『優秀なα性』を産むという使命が課せられる。

特に和也は『男のΩ性』だから国の期待も大きいはず。

今まで以上に辛いこともあるかもしれない。

でも『番』なる相手によってそれが半分にも、逆に2倍にも3倍にもなる。

辛い事を半分にしてくれる、それ以下にしてくれる、そんな相手を和也には選んで欲しい。


「にぃ…さん」

「……えっ?」

ドキッとして和也の顔を見たけど、まだ夢の中。


そっか……そうだよな。

俺もマッチングシステムで選ばれた1人。


だから俺を選ぶ可能性だってある。



じゃあもし、俺を選んだら?



うん……嬉しい。



素直に今、想像した時そう思えた。


撫でている手を頬に滑らせて包んだ。



和也には絶対に幸せになって欲しい。



でも俺は……

それを願うだけでいいのか?



その願いを俺が叶えることは出来ないのか?


俺が和也を幸せにすることは出来ないのか?



「カ…ズ」

呼び方を変えてみた。


なんか……恥ずい。


たったそれだけだけど、少しだけいつもと違う気がした。

って、勝手に意識してそう思い込んでいるだけかもな。


俺たちに『好き』という感情はまだ芽生えてはいない。

そしてその感情を持つのはそう簡単なもんじゃない。


じゃあ、3人は?

好きという感情を持ったとしても、必ず和也……カズを幸せにしてくれるのか?


俺だったら……


「やるっきゃ……ないよな」

何をって話だけど、そんな俺の決意にカズは笑ったような気がした。


【To be continued】

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