テキストサイズ

まだ見ぬ世界へ

第9章 幸福論【初対面①】

か…可愛い。

小豆色っていうのかな?

落ち着いた色のダッフルコートも似合ってるし、何より小柄だから自然と萌え袖になってる。

そして身長差が自然と上目遣いになるんだよ。

「相葉…さん?」

「えっ、あ…すみません!初めまして、相葉です」

コテって首を傾げて不思議そうに俺を見つめる姿もまた可愛いと思える。


ドストライク……だな。


「寒かったですよね。すみません、お待たせして」

「いえ、俺もさっき来たばっかりですから」

舞い上がっている気持ちを落ち着かせるように、努めて冷静に受け答えした。


一応、年上だしね。


「俺が言うのも変ですけど、待ち合わせまでまだ時間が……」

袖を少したくし上げて腕時計を見ても、俺が待ち合わせに到着して5分くらいしか経っていない。

「遅れてはダメだって思って早めに家を出たら、早く着き過ぎてしまいました」

少し俯き加減で照れ笑いを浮かべている。

「俺もです」

「ふふっ、一緒ですね」

和也くんに笑顔つられて俺も笑った。


こうやって話していると、和也くんが『Ω性』ということを忘れてしまう。


苦労?じゃないけど……

負のオーラ的なものを感じない。


『α性』には『α性』だからこそ苦悩がある。

それ以上に『Ω性』には『Ω性』だからこその苦労がある。


それに比べたら『β性』はいたって普通。

過剰な期待をされることもなく、蔑まれることもない。

まぁ、大勢多数が一番楽で可もなく不可もなし。


そんな『β性』の事をどう思っているんだろうか?


「ここにいても寒いですし、行きましょうか」

「そうですね。でも、どこに?」

「あれ?父から聞いてませんでした?ここですよ」

和也くんが指さしたのは待ち合わせをしたビル。

「ここ、実は父が所有していているんです」

「えっ?」

俺は改めてそのビルを見上げた。


ビルを所有って……スケールがでかすぎるわ、マジで。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ