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まだ見ぬ世界へ

第9章 幸福論【初対面①】

「それではご案内します」

エレベーターで最上階に上がると、スタッフが待ち構えていた。

「ここは?」

「パーティールームです」

「パーティールーム?」

「相葉さんは利用したことないですか?打ち上げとかに利用するって父から聞いてたんですが」

「あー、そういえばあった!」

打ち上げだったり、新年会や忘年会の際はここではないけど、個室のある広めのお店を利用している。

いつも同じ場所だなって思ってたけど、会員登録的?な事を会社でしているのかなって。

だから料金が安いだって思ってたけど、社長が経営しているからだったんだ。


社長、ホント手広くビジネスを展開してるんだな。


「だだここは少人数向けなので、いつも相葉さんが打ち上げとかで使っていた場所よりは狭いと思いますよ」

「和也くんは利用したことあるの?」

「いいえ、初めてです。行く人も……いないですし」

「ごめん、無神経だったね」

職業柄?なのか、相手の表情など微妙な変化には敏感だ。


一瞬、和也くんの表情が変化した。

そしてそれは良くない方。


「いえ、俺も余計な事言っちゃいましたね」

申し訳なさそうに苦笑いを浮かべた和也くんに俺は首を横に何度か振った。


ほんの微々たるものだけど、和也くんの表に見えない内側が見えた様な気がした。


「知ってる事って、お互いの名前くらいでしょ?だから色んなこと知りたいって思ってる。だから、気にしないで」

「そう言っていただけると嬉しいです」

ホッとした表情を見せた和也くんだけど、俺は違う表情が見たいって思う。


俺が思っている以上に『Ω性』というだけで、出来ないことが多いのかもしれない。

そしてそれはその後の楽しさも知らないってこと。


「だからさ、今日はめーいっぱい楽しもう」

「はい、ぜひ!よろしくお願いします」

俺たちはまたお互いに微笑み合った。

「こちらでございます」

そしてドアが開くと、俺たちは部屋へと入った。

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