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まだ見ぬ世界へ

第9章 幸福論【初対面①】

「わかってます。相葉さんがそんな事、思うはずないって事。でも世の中にはそういう人が大勢いるのも……事実です」

和也くんは少しだけ辛そうな表情を見せた。

「ごめん、嫌な事……言わせたね」

「ほら、やっぱり相葉さんは優しいです」

和也くんに言われてもやっぱり納得できない自分がいる。


そもそも自分が『優しい人』って思う人はいないけどさ。


「きっかけひとつで人は変われると思うんです。でもそれがいい方向になのか、悪い方向になるのかは……その人次第だと思います」

和也くんはニコッと俺に微笑んでくれた。

「何に相葉さんが引っかかっているのか俺にはわかりません。でも相手に伝わっていないなら気にしなくていいんじゃないですか?」

「えっ?」

「それが仮に良くない事ならいつかボロは出ると思うし、それをどうどう判断するのも相手次第でしょ?でも相葉さんならそんな事ないと思いますよ?」

「そこまで言い切る?」

どこまでも俺への良いイメージがブレない和也くんに思わず笑ってしまった。

「俺、案外……頑固なんです」

「それは違うと思うよ?」

「えっ?」


頑固な人って嫌われる。

協調性が無かったり、努力をしていなければ誰も認めてはくれない。

だからこそいくら優秀な『α性』でも傲慢であれば嫌われる。


まぁ、そんな事を面と向かっては言えないけどね。


でも和也くんは違う。

傲慢だなんて思わない。


あっ、そっか。

俺も和也くんと同じだ。


過去にどんな事があったかなんて知らない。

きっと傷ついた事もたくさんあったと思う。


でもその過去があったからこそ、今の和也くんがいる。


和也くんが『今』の俺を見てくれている様に、俺も和也くんの『今』を見ている。


「頑固者がどうかは、俺が決めることでしょ?」

「ふふっ、そうですね」

一瞬驚いた顔をしたけど、すぐに笑顔に変わった。

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