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まだ見ぬ世界へ

第9章 幸福論【初対面①】

「だから雅紀さんが好きだった人もきっと雅紀さんの事、最低な人だなんて思ってないです」

「……えっ?」

「俺が恋愛対象として誰かを見た事ないって言った事、そしてその理由、覚えてますか?」

「あ…うん、覚えてる」

突然俺の過去の話になってビックリしてるけど、和也くんはその理由を聞く隙すら与えてくれない。

「それは雅紀さんが好きになった人も同じだと思うんです」

「同じ?」

「『Ω性の男』なんて誰も好きにならない」


そうだ。

和也くんの言う通り、そう思ったから告白したんだ。


そしてそれは本人、つまりはあの人も思ってた事。

なら、俺は……


「でも雅紀さんがその方を『好き』になったことは嘘じゃないでしょ?」

俺はしっかりと頷いた。

「そこに雅紀さんが最低だと思った下心があったとしても、仮にそれを知っていたとしても、それでも誰かが『Ω性の男』好きになってもらえらえるなんて……奇跡以外の何物でもないんです」

「でもあの人にとっては奇跡じゃなく、意味のないモノだった。そう、あの人が言ったんだから……」


『僕の価値を見出してくれるのはα性だけ。β性にどんなに想われても僕にとって何の意味もない』

俺に突きつけたこの言葉が、全てを表している。


「言葉だけを信じるんですか?」

「それで充分じゃ……」

「その言葉だけでその人の気持ち、全部決めちゃうんですか?言われた直後はそうであっても……今は、今は違うんじゃないですか?」

「今…は?」

「相葉さんは言葉だけだったり、何か『ひとつ』の事だけでその人を決めつけるような人ではありません。だから嫌だと思うけど……今、ちゃんと向き合ってください」

「向き合う?」

「はい。あの時の事をもう一度、思い出して下さい。きっとあの時気づかなかった何かがあるはずです」

何も確証がないのに和也くんは断言する。

「……わかった」

俺は記憶を巻き戻し、あの日の事を思い起した。

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