まだ見ぬ世界へ
第10章 想いを紡ぐ
あれは小6の春。
今日のように満開の桜が咲いていた。
「何で、俺が買い物に行かなきゃならないんだよ」
春休みの最終日。
家でゆっくりするって決めたのに……
「くそっ!」
目の前にある石を思いっきり蹴った。
その石は思いの外、勢いよく飛んで少し離れた所にいた子に当たった。
「あっ、ごめん」
俺は慌ててその子に駆け寄った。
「大丈夫?」
俺の声に何も反応しないで、下を向いている。
しゃがみ込んで顔を覗き込んだら、ポロポロと泣いていた。
ヤバい、俺泣かしちゃったよ……
「どっか、痛い?」
その子は何も言わず、俺の横を走って逃げてしまった。
マズい、マズい、母ちゃんにチクる気じゃん。
怒られるのは勘弁してほしい。
「ちょっと、待て!」
その子は直線に暫く走った後、石造りの階段を上っていく。
小さいクセにすばしっこいヤツ。
止まった姿を捉えたのは、大きな桜の木の下だった。
「何なんだよ、マジで」
息を切らしながらその子の隣に立つ。
「何で逃げ……」
さっきまで下を向いてたのにその子は桜の木をずっと見つめていた。
涙を流しながら……
そんな姿をみたら、怒る気になれなかった。
「どうした?」
でも俺の問いかけには相変わらずの無視。
「何か言えよ」
「……しらないひととはしゃべらない」
ポツリと桜を見つめながら呟いた。
そういう事か……
俺はその子の隣に再びしゃがみ込む。
「俺の名前は大野智」
「おおの……さとし?」
「そう、覚えた?」
「うん」
「じゃあ、もう知らない人じゃない?」
「……うん」
目を手でゴシゴシと擦りながら俺をみた。
案外、可愛いやつじゃん。
そっと髪を撫でてやった。
「何で、泣いてんだ?」
俺の言葉を聞いてまた、桜を見上げる。
「……しんじゃった」
手に持っていた首輪を俺に見せた。
「もう、ハルにあえない……」
また目から涙がポロポロ落ちていく。
「ハルのすきなさくら……もう、いっしょにみれない……」
今日のように満開の桜が咲いていた。
「何で、俺が買い物に行かなきゃならないんだよ」
春休みの最終日。
家でゆっくりするって決めたのに……
「くそっ!」
目の前にある石を思いっきり蹴った。
その石は思いの外、勢いよく飛んで少し離れた所にいた子に当たった。
「あっ、ごめん」
俺は慌ててその子に駆け寄った。
「大丈夫?」
俺の声に何も反応しないで、下を向いている。
しゃがみ込んで顔を覗き込んだら、ポロポロと泣いていた。
ヤバい、俺泣かしちゃったよ……
「どっか、痛い?」
その子は何も言わず、俺の横を走って逃げてしまった。
マズい、マズい、母ちゃんにチクる気じゃん。
怒られるのは勘弁してほしい。
「ちょっと、待て!」
その子は直線に暫く走った後、石造りの階段を上っていく。
小さいクセにすばしっこいヤツ。
止まった姿を捉えたのは、大きな桜の木の下だった。
「何なんだよ、マジで」
息を切らしながらその子の隣に立つ。
「何で逃げ……」
さっきまで下を向いてたのにその子は桜の木をずっと見つめていた。
涙を流しながら……
そんな姿をみたら、怒る気になれなかった。
「どうした?」
でも俺の問いかけには相変わらずの無視。
「何か言えよ」
「……しらないひととはしゃべらない」
ポツリと桜を見つめながら呟いた。
そういう事か……
俺はその子の隣に再びしゃがみ込む。
「俺の名前は大野智」
「おおの……さとし?」
「そう、覚えた?」
「うん」
「じゃあ、もう知らない人じゃない?」
「……うん」
目を手でゴシゴシと擦りながら俺をみた。
案外、可愛いやつじゃん。
そっと髪を撫でてやった。
「何で、泣いてんだ?」
俺の言葉を聞いてまた、桜を見上げる。
「……しんじゃった」
手に持っていた首輪を俺に見せた。
「もう、ハルにあえない……」
また目から涙がポロポロ落ちていく。
「ハルのすきなさくら……もう、いっしょにみれない……」