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まだ見ぬ世界へ

第10章 想いを紡ぐ







「ああ…っ、んっ…はげ…しぃ…っ」

「締め付け凄いよ…お前…っ」

「もう…っ、ダメっ…ああっ、イク…っ!」

「絡み付く…っ、俺も…っ!」


今週に入って多くないか?

俺もそんなに暇じゃないっつーの。


ってか、二宮を狙ってんじゃねーのかよ。

ほいほい、見張りしてる俺も俺だけど……


「はぁー、何やってるんだろう」

溜め息の一つも出したくなる。

カチャっとドアの開く音が聞こえ、反射的に音のする方に顔を向けてしまった。

「「あっ……」」

また、この前と同じ生徒。


随分、入れ込んでるんだな。

それとも、この生徒が櫻井先生に入れ込んでいるのか?


そんな事を考えていたら、眩しすぎる笑顔を俺に向けて理科室を出て行った。


情事のあとに、何でそんな爽やか感を醸し出せるんだろうか。


「見張り、ご苦労様でーす」

目の前に差し出された缶コーヒー。

「安すぎないか?」

「じゃあ、俺が……」

「飲むっつーの」

手から奪って缶コーヒーのプルタブを開けて一口飲む。

「で、どうなの?」

「何が?」

ハラリと白衣を着る櫻井先生。

「何がじゃねーよ!」

「あっ?二宮くんの事?」

「……そうだよ」

「気になる?気になっちゃう?」

嬉しそうに上半身をユラユラ揺らしてる。


ホント、腹が立つな……


「聞いた俺がバカだった……」

また溜め息をついしまった。


櫻井先生のせいで今日何回、溜め息ついたと思ってんだよ。


「もうすぐ、落ちるよ」

「えっ?」

「ふふっ、楽しみだな」

スキップ?みたいなステップでさっきまで情事をしていた準備室に消えていった。


その姿をボーっと眺めた後、俺も理科室を後にした。


「はぁー」

今日一番の溜め息。


気にする必要なんてない。

二宮はただの生徒。

俺には関係ない。

櫻井先生との情事なんていつもの事。


なのに……

どうして……

こんなにモヤモヤした気分になるんだ。



『知らない人には教えない』



この言葉が頭から離れない。


たまたまだ。

あの日と同じような言葉を二宮君が言った。


ただ、それだけ。

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