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まだ見ぬ世界へ

第11章 アイツは可愛い年下の男の子

俺が思い出していた事。


「翔くんの事が……好きだっ!」

顔を真っ赤にして、ほぼやけくそに近い告白。


そりゃそうだよなって、今になって思う。


『男』ましてや『メンバー』の俺の告白に勝算なんてあるはずがない。

けど勇気を振り絞って伝えてくれた『好き』という想いは、スーッと俺の心に染み入って、そして俺の潤への気持ちの変化の理由を教えてくれた。

だから『俺も好きだよ』って素直に気持ちを伝えた。

そしたら潤はポロポロと涙を流しながらも、『良かった、嬉しい』ってくしゃくしゃの笑顔を見せた。


その姿に可愛いやら、愛おしいやら……


俺は迷わず潤を引き寄せ、抱きしめた。

初めて潤を抱きしめた感覚は女性みたいに華奢じゃないし、柔らかさもない。


でもそれが嫌だとは思わなかった。

逆にしっくり来てるから不思議だ。


『翔…くん』

少し照れくさそうに俺の名前を呼び、首の当たりに顔を埋め、ゆっくりと背中に手を回してきたんだ。

「潤」

そして初めての呼び名にピクッと抱きしめていた身体が震えてた。


正式ってのは変だけど……

それが俺がメンバーとしてじゃなく、恋人になった証みたいに思えた。


「なぁ、俺の名前も呼んでくれないか?」

『さっき……呼んだじゃん』

「そうじゃなくてさ」

ちょっと拗ねてる潤も可愛いけど、俺だって実感したかったんだ。

『しょ…う』

初々しいってこの事なんだって初めて感じた気がした。


まぁ、その初々しさは今でも健在なんだけどね。


『気持ち悪い』

「…へっ?」

『なに思い出してるか知らないけど、さっさとご飯食べてくれる?』

残った刺身を俺の前に差し出した。

「わかったよ。そんなに早くシたいんだ」

『ばっ、バカ!早く片づけたいんだよ』

「結局は早く……」

『もう……黙れ!』

「んが…っ」

顔を真っ赤にして、残っていた刺身をまとめて箸で掴むと俺の口に押し込んだ。


焦っちゃってさ……マジ、可愛すぎ。

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