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まだ見ぬ世界へ

第12章 愛を叫べ

【松本side】


「そこの信号を左に曲がって」

ニ「りょうかーい」

軽快に左にハンドルを切る。

いざ2人っきりになると、俺のナビとその返事だけで会話が全くない。


騒がしいのは俺の胸の鼓動だけ。


ニ「潤くん?」

「えっ?」

ニ「もう、着いたよ?」

目の前に広がる光景は、数台の車が止まった駐車場だった。

「ごめん、ごめん。降りよっか?」

車を降りると、カチャっと鍵がかかる音と共にニノがこっちに駆け寄ってきた。

ニ「大丈夫?体調、悪いんじゃない?」

俺の顔を覗き込み、額に掌を当てた。


その瞬間にすべての神経が額に集中した。


「だっ…大丈夫だよ!」

顔の火照りを悟らないよう慌てて後ずさり、ニノから離れた。

ニ「嘘。さっき触れた時、熱かったよ?やっぱり体調が悪いんでしょ?」

暗闇から見えるニノの表情は、テレビで演じている『二宮和也』じゃなくて本当に俺のことを心配している顔だった。


そんなニノにもう、嘘はつけない。

これ以上、自分の気持ちを誤魔化すことはできない。


今、俺の立つ場所は照明が当たらな暗い場所。


ここなら……伝えられる。


暗闇から再び伸びてくるニノの手をグッと掴んで引き寄せた。

ニ「うわっ!潤くん?」


『J』ではなく、普段呼ぶ俺の名前にドクンと高鳴る鼓動。

俺の胸にすっぽり埋まるニノにも伝わっているだろうか。


ニ「どうしたの?潤くん……」

普通ならこの状況に驚いて逃げ出すのに、ニノは空気を読んでジッと留まっている。


俺の心配までして……


「ずっと……こうしたかった」

ニノの体温が俺を温め、ずっと秘めていた気持ちが溶け出した。

ニ「…えっ?」

ニノが俺の顔を見上げた。

「ずっと……ニノが好きだった。俺と……付き合って欲しい」

俺の言葉に目を大きく見開いて、パチパチと瞬きをする。

ニ「えっ…と、あの……」

「返事は今じゃなくていい。もし、俺の気持ちを受け止めてくれるなら……」


戸惑うニノを申し訳なく思ったが、もう止められない。


この気持ちにブレーキをかけるのも、アクセルを踏むのもニノの答え次第。

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