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まだ見ぬ世界へ

第12章 愛を叫べ

【相葉side】


「ちょっと……トイレ行ってくる」

少しふらつきつつ、リーダーの後ろを通って個室を出た。

急ぎ足で向かうと、ニノが洗面台でパシャッと顔を洗っていた。

「ニノ、大丈夫?気分悪いの?」

俺の声に驚いてピクっと身体を震わせると、前屈みのまま顔を覆った手のすき間から俺の方をチラッと見た。

ニ「相葉さんですか……ビックリさせないで下さいよ」

手で顔の雫を落としながら、苦笑いする。


濡れた前髪がピタっと額に張り付く。

その姿は可愛く、頬が緩みそうになる。


落としきれなかった雫はゆっくりと下に流れ、シャープな顎からホクロを通ってポツリポツリと床に落ちていく。

その姿は妖艶で、目が離せない。


相反する2つの雰囲気が、俺の気持ちをどんどん煽っていく。


当の本人はそれに気づいていないから厄介だ。


ニ「どうしたの?相葉さん?」

ボーっとしていた俺に近づき心配そうに顔を傾げる。


プライベートで……

そんな至近距離で見つめられたら……


もう……止められない。


俺はニノの背中に手を回してギュッと抱き寄せた。

ニ「うわっ、相葉さん……なに?」

「ニノが悪いんだからな」

ニ「もう、意味がわかんないですけど」

身体をモゾモゾ動かして俺から離れようとする。

腕の力を緩めると、慌てて俺から離れようとするの逃すまいとグッと肩を掴んだ。

ニ「もう、なにする……」

俺の事を見上げた瞬間、言葉を止めた。


たぶん、今までに見た事がないくらい真剣な顔をしていると思う。

そしてニノはその姿を見て、瞬時に察した。


俺の話を聞かなきゃいけないって……


でも何を言われるかわらかない不安で、琥珀色の瞳が揺れる。


ちゃんと、伝えなきゃ……


「ニノのことが好きだ!俺と付き合って!」


俺の言葉の内容と声の音量にビックリして、目をパチクリさせている。


ニ「俺…」

「ストップ!返事はちょっと待って!もし、俺の気持ちを
受け止めてくれるなら……」


ニノが出ていく姿を見送ると、洗面台に行き蛇口を捻って水を出し顔をバシャバシャ洗った。


鏡で濡れた顔を見つめる。


俺の気持ちを潤すのも、蒸発して消えていくのもニノの答え次第だ。

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