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まだ見ぬ世界へ

第12章 愛を叫べ

「ここで本当に……あってるの?」

「はい、ここと伝えられました」

到着したのは都内の高級ホテル。

「撮影か何かなの?」

「いえ、その様なスケジュールは入ってないので」


なら、ますますここに呼び出された理由がわからない。

飲みたいって事でもなさそうだし……


「じゃあ、私はここで……」

「えっ?俺、どうしたらいいの?」


プルルルルッ…


電話がなり、画面には翔ちゃんの名前。

「では、お疲れ様でした」

「あ、うん…お疲れ」

戸惑う俺を置いて、マネージャーは車で去っていった。

「もしもし、翔ちゃん……これ、どういう事?」

『まぁ、取りあえず最上階まで上がってきて。話はそれから』

「最上階?もしかして翔ちゃん、そこにいるの?」

『うん、そうだけど』


サラッと言ってるけど、最上階って事はスイートルーム的な部屋でしょ?

値段とか……ヤバくない?


『待ってるから、早く来てな』

翔ちゃんは俺の返事も聞かず、電話を切った。


煌びやかでだだっ広いロビー。

真夜中にお客はおらず、スタッフの視線がそこを歩く俺に注がれる。

『いらっしゃいませ』
『いらっしゃいませ』


もう……お願いだから、俺に声をかけないで。


ペコっと頭を下げて答えつつ、早足でエレベーターに向かい、扉が開いた瞬間スッとエレベーターに乗り込む。

最上階のボタンを押すと、『閉』ボタンを連打。


なんかもう……これだけで疲れた。


チーン…


「いらいしゃいませ」

「うわ…っ」

誰もいないと思っていたのに、お出迎えの人が俺に頭を下げる。


気の休まる暇もないんですけど……


ペコっと頭を下げると『ご案内します』といって、俺の前を歩く。


コンコン…


「はーい」


ん?

この声……翔ちゃんじゃない気がする。


「二宮さま、到着いたしました」

扉越しに伝えると、また俺にペコリと頭を下げて去っていった。

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