まだ見ぬ世界へ
第12章 愛を叫べ
コンコン…
コンコン…
ノックしても返事がないので、音を立てない様にドアをあげると智はキャンバスに向かって一心不乱に筆を走らせている後ろ姿。
「さーとーし」
少し声を抑えて声をかけてみたけど、予想通り返事はない。
完全に自分の世界に入っちゃってるな。
「俺の事……忘れてない?」
大「うわっ、ビックリした」
後ろからギュッと抱きつくと、ピクっと身体を震わせて振り返る。
大「ごめんごめん、あとちょっとだったからさ」
「ちょっとが長いよ」
大「もう終わるから、拗ねんなって」
「別に拗ねてなんて…んっ」
心を見透かされ、思わず逸らそうとした顔をガシっと掴まれると強引に唇を奪われる。
開けろとばかりにツンと舌で唇をツンとされると、素直に空間を作るとスルりと口内に侵入し、俺の舌を絡めとられる。
静かな部屋に響く厭らしい水音と甘い吐息。
これでもかというくらいに口内を貪られ、あっという間に身体に力が入らなくなる。
大「ふふっ、骨抜きってやつ?」
「違う…もん」
唇が離れると、立ち上がってギュッと俺を抱きしめて支えてくれた。
大「さーて、絵も一段落したし……今からはカズとの時間だからね」
「ぁ…っ」
耳元で吐息混じりに囁かれ、思わず声が漏れた。
「ちょっ…と、待っ…て」
大「えー、待てない」
そう言って耳朶にチュッと何度もキスを落とし、それが首筋へと下りていく。
「んっ、ご飯…先に…っ」
作品を作っていると、どうしても食事が疎かになる。
だから俺が家に来れる日だけでもしっかりご飯を食べて欲しい。
大「後で食べるから、だいじょーぶ」
「大丈夫じゃ……んっ」
俺の制止の言葉は智の唇によって塞がれる。
そしてまた智のキスで身体の力が抜け、そして熱を帯びていく。
「で、どうする?ご飯?それとも……俺?」
俺を見てニヤっと笑う智。
「……意地悪」
わかってるくせに。